こんにちは!
奈良県橿原市の
国公立・関関同立専門予備校
ナセバです
さて、今回の記事は
ご報告からスタートします。
当塾に通う、高3生のAさんが
立命館大学映像学部のAO入試に
見事合格を果たしてくれました!
Aさんは高3の3月に入塾。
第一志望の合格に向けて、
ここで頑張ると決心してくれました。
そして、一般入試に向けた学習を
1からスタートさせました。
部活も非常に熱心で、忙しいながらも
塾での勉強と両立を図るべく、
毎日大変頑張ってくれていました。
そして、高3の夏、
「先生、私AO入試も受けてみようと思うんです」
と相談してくれました。
Aさんの選択を迷わず後押し、
その日から対策の日々が始まりました。
今回の記事は、
立命館大学映像学部のAO入試を受け
合格を果たしたAさんの指導内容を
読者の皆さんにもシェアしたいと思います。
では、早速見ていきましょう!
立命館大学映像学部のAO入試
立命館大学映像学部のAO入試に関して
詳細を見ていきましょう!
(以下に記す内容はすべて立命館大学のHPにある募集要項を参照しています。)
https://ritsnet.ritsumei.jp/application/ao/asset/dl/eizou.pdf
アドミッションポリシー
芸術(アート)的、経済(ビジネス)的、工学(テクノロジー)的な
要素を備える様々な科目を通じて、映像に関する「理論」と「実践」を
繰り返し学んでいきます。こうした学びの中で、多様化する映像を社会の様々
な場面で利活用できる「プロデューサー・マインド」を身につけ、
未来の映像文化および映像産業を担う強い意志を持つ学生を求めます。
具体的には、以下の資質を備えている学生を求めます。
映像を学ぶことに関わる総合的な学力を備えている者
映像を表現し、理解するための知識と技能を身につける意欲を備えている者
映像を通じて広く人類と社会に貢献していく強い意思を備えている者
アドミッションポリシーは
入学者の受け入れ方針をまとめたものです。
入学者に求める能力や人物像について
理解することができます。
「社会に貢献していく強い意思」
という文言が印象的ですね。
ペーパーテストでは図りにくい、
「映像に関する独創的な表現力」などを
評価するためのAO入試です。
募集人数・選考方式
映像学部のAO入試は1次選考と2次選考からなります。
2次選考では「映像撮影型」と「絵コンテ型」の
2つの方式があり、いずれか1つを選択して出願します。
(映像撮影と絵コンテの併願は不可)
映像撮影型は大学が用意する簡便な
機器を実際に使って撮影を行います。
絵コンテ型は与えられた課題に対して
絵コンテを作成します。
ちなみにAさんは、
映像撮影型で受験しました。
後ほど詳しく解説します。
募集人数は
映像撮影型で10名
絵コンテ型で7名と
狭き門となっています。
2022年度入試での結果は
【映像撮影型】
志願者:51名
1次合格:14名
合格:10名
【絵コンテ型】
志願者:33名
1次合格:10名
合格:7名
どちらも5倍近い倍率です。
しっかりと対策したうえで
受験したいですね。
立命館大学映像学部AO入試の1次選考の内容
続いて、より詳しく
選考の中身を見ていきましょう。
1次選考はどちらの型も
共通の課題です。
出願書類と一緒に
エントリーシートや
課題を提出します。
⑴調査書等
⑵エントリーシート
⑶課題(物語制作)
⑷写真
(ソース)https://ritsnet.ritsumei.jp/application/ao/asset/dl/eizou.pdf
エントリーシート
エントリーシートでは
A・B・Cの3つの記入欄があります。
A欄
あなた自身が成長したと思うこれまでの
映像に関わる経験について、具体的な
エピソードを交え 800 字程度で入力してください。
B欄
A 欄の内容を踏まえ、映像に関わって、
今後さらにどのように成長したいのかを
650 字程度で入力してください。
C欄
A 欄の内容を踏まえ、映像に関わって、
今後さらにどのように成長したいのかを
650 字程度で入力してください。
課題(物語創作)
Aさんが受験した、2023年度入試では
課題は以下の通りでした。
映像作品化を前提に、童話『アリとキリギリス』を
原案として、オリジナルの物語を創作しなさい。
登場人物(動物や非生物含む)は、任意に変更してよい。
(a)創作した物語のタイトルを[(a)物語のタイトル]の欄に入力してください。
(b)物語の本文を[(b)物語本文の入力欄]に800字程度で入力してください。
(c)物語の一場面を表現する「写真」または「絵」を貼付用紙(書式A9)の[(c)貼付欄]に貼付してください。
(d)[(d)「写真」または「絵」の説明文の入力欄]に次のとおり入力してください。
「写真」または「絵」について、どの場面の何をどのように表現したのかを200字程度で説明してください
https://ritsnet.ritsumei.jp/application/ao/asset/dl/eizou_form_shoshiki.pdf
「オリジナルの物語を創作する」という
シンプルな課題かに思えますが、
「映像作品化を前提に」
「アリとキリギリスを原案に」
という条件をしっかりと満たす必要があります。
立命館大学映像学部AO入試の2次選考の内容
2次選考の内容は
以下のようになっています。
午前
大学が準備する簡便な機器
(タブレット端末、デジタルカメラなど)
での映像撮影およびその解説文章の作成
① 試験概要の説明
② 課題の説明
③ 実技
ア 映像の撮影 *撮影機器は本学が準備したものを使用します。
撮影の条件(機器<操作方法を含む>、撮影可能なエリア等)については当日説明します。
イ 撮影した映像の提出
ウ 撮影した映像についての解説文章作成
撮影した映像と解説文章は、表現力、構想力、構成力、課題の内容把握と理解等を評価します。
午後
プレゼンテーションおよび個人面接
プレゼンテーションは撮影された映像の内容ならびに解説文章などについて口頭形式で実施します。
その後、出願書類の内容も含めて個人面接を行います。
プレゼンテーションの評価基準は、創作物を明確に解説できているか、論理的に発表できているか、
的確に質疑応答ができているか等とします。また面接では映像を本学で学ぶ強い意思を持っている
か、的確に質疑応答ができているか等を評価します。
https://ritsnet.ritsumei.jp/application/ao/asset/dl/eizou.pdf
イメージが湧きやすいように、
例題を作成します。
テーマ:「協力」
⑴テーマに沿った写真を撮影(4枚)
⑵撮影した写真に対する解説文を作成
⑶写真と解説文を基にプレゼン
といった具合です。
立命館大学映像学部AO入試の対策
さて、ここからは当塾で
Aさんに対してに行った対策に
ついて詳しく解説します。
対策のポイントや必要な力
あえて最初にポイントをまとめます。
この5点を心がけてください。
一見すると、映像学部に対してもAO入試に
対しても専門性に欠いたアドバイスのように
見えるかもしれませんが、とても重要なことです。
たしかに撮影技術など専門分野での
高いスキルも非常に重要です。
しかし、それだけでは合格できると
断言できません。
5つのポイントはそれ以前の問題で
いわば土台・基礎の部分です。
そしてこれらの力が、必要なのは
立命館大学の映像学部に限った
ことではありません。
どの大学を受けるにしても、
学力同様に非常に大切な部分
だと感じています。
1次選考の対策
エントリーシート
お待たせしました。
いよいよ具体的な対策についてです。
1次選考は、添削と深堀質問が中心でした。
手順と心がけたことをまとめます。
まずは、エントリーシートの
A欄・B欄・C欄で書くことを
箇条書きでもいいので、
具体的にリストアップするよう
指示しました。
次にリストアップした
項目について深掘りするための
質問を投げかけました。
書いている本人が自分自身を
理解できていない、核心を掴めていない
という事も珍しくありません。
例えば、
「私は中学の時、○○をみて映像に興味を持ちました。」
というエピソードに対して、
「○○の何に心を動かされたの?」
「その時どんな気持ちになりましたか?」
「将来は●●を創作したいです。」
というエピソードに対して
「なぜ●●なんですか?」
「作品を通して、世界にどんな影響を与えたい?」
「対象は誰?」「どうしてその人たちなんだろう」
「そのためには何が必要?」
という具合です。
遠回りに見えますが、本人の中に落とし込むことで
のちの論理構成や文章に一貫性を持たせるにに
有効だと考えています。
また、「志の明確化」にも有効です。
つぎは深掘りした内容を
文字数に従って文章化です。
Aさんの場合はエピソードに困りませんでした。
つまり話のネタはたくさんありました。
そこで重要なのは「どのように伝えるか」です。
読み手の心を動かす文章には
☆ 起承転結の構成を意識する
☆ アクションと目的に一貫性をもたせる
☆ 「出来事」と「感じたこと」をセットで
これらのことを心がけましょう。
1度文章にした後は、
さらにAさんと問答を繰り返し
表現の仕方や、構成に関して
ブラッシュアップを重ねました。
大げさでなく、10回以上は
修正・提出→添削のやり取りを
繰り返しました。
A欄・B欄・C欄それぞれに
抑えておきたいポイントがあります。
まだまだ書きたいところですが、
今回はここまでにしておきます。
物語の創作
まずは3パターンほど
書いてくるように指示しました。
3案の下書きをもとに深堀り質問を
投げかけました。
「この物語を通して何を伝えたかった?」
「工夫したところは?」
「起承転結に当てはめるなら?」
といった具合です。
作品を本人もよく理解できたところで
磨き上げる1本を決めてもらいました。
ここで重要になってくるのが、
「読み手の存在」です。
物語になると特に
「自分が伝えたいこと」や
「盛り込みたいシーン」「セリフ」
など創作者のエゴが入りすぎてしまう
ケースがあるように思います。
いれたいものを全部盛り込むのではなく、
文章全体としての流れを決め、その中で
ひとつひとつの言動に意味づけをする
必要があります。
字数制限がある以上、あまり役割の無い
セリフや設定は省くべきです。
限られた時数の中で、読み手に伝わりやすく
尚且つ心を動かす「転」と「結」を用意しましょう。
さらに、「映像化を前提」という
条件も必ず意識してください。
映像化するという事は、文学的な面白さに加え
ビジュアル的な面白さ・刺激も求められます。
当然、文字だけで映像を表現できるわけはないので、
情景描写や比喩、オノマトペを効果的に用いて
読み手が頭の中で再生できるような物語に
なるといいですね。
最後に重要なのは
「アリとキリギリスを原案に」という条件です。
これを満たすには、アリとキリギリスの構成を
正しく理解しておく必要があります。
夏の間、アリたちは冬の食料を蓄えるために働き続け、
キリギリスはヴァイオリンを弾き、歌を歌って過ごす。
やがて冬が来て、キリギリスは食べ物を探すが見つからず、
最後にアリたちに乞い、食べ物を分けてもらおうとするが、
アリは「夏には歌っていたんだから、冬には踊ったらどうだい?」
と食べ物を分けることを拒否し、キリギリスは飢え死んでしまう。
ウィキペディア「アリとキリギリス」より引用
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%81%A8%E3%82%AD%E3%83%AA%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B9
アリはコツコツ努力して助かる。
キリギリスは怠慢で困る。
アリはキリギリスの助けに応じない。
この構成を捉え、どのように
アレンジするかがポイントです。
アリの立場の登場人物が
キリギリスの立場の登場人物に
憧れ始めるという展開では
題意を十分に満たしているとは
言えないと思います。
アリは努力で助かり、
キリギリスは怠慢で困るが、
でもキリギリスにも長所があり、
互いに理解を深めはじめ….
といった、原案の構成を活かした
状態でのアレンジが好ましいのかも
しれません。
ただ、ここはあくまで
芸術表現なので過度に
萎縮するべきでもありません。
実際、突き抜けた設定でも
素晴らしい出来になり得ます。
まずは
・伝えたいこと・表現したいことをハッキリさせる
(友情の尊さ、努力の大切さ、努力するうえで大事なこと等)
・一貫性を持たせる(論理構成)
(○○が△したのは~だからと分かるように)
この二つを意識して
創ることを目指しましょう!
2次選考の対策
1次の合格発表から
2次本番までは2週間ほどしかありません。
可能なら1次を提出した直後から
2次の練習も始めましょう。
2次試験では写真撮影の
実技が課されますが、
1次同様、ここでも論理や
表現が試されます。
選考の方法は先述した通りです。
選考には小道具が与えられるとのことです。
Aさんからはヒト型の模型と
ブロックが与えられると聞いていました。
そういった条件も可能な限り
忠実に再現しました。
(張り切って購入しましたが、
のちにダイソーでも売っていると聞きました…涙)
以下のようなシートを使って
練習を開始しました。
最初は、写真撮影せずに
簡易なイラストで4枚分描いて
解説文を書く練習とその後のプレゼンの
練習に重点を置きました。
ここでのポイントは
テーマからある程度の起承転結を
素早く想起すること。
想起した内容を写真で表現し、
解説文で適切に補うこと。
最初の1週間半は毎日これを繰り返しました。
やはり回数を重ねるごとに、精度が高くなり、
スムーズにできるようになりました。
残りの期間で、本番の形式に
近い練習を毎日行いました。
制限時間を設け、撮影し、
面接の練習を行いました。
練習をしているときの
イメージを少しだけお伝えします。
以下のような写真と解説文を
作成し、プレゼンで説明する
というイメージです。
【テーマ:挑戦】
【解説文】
人は何かに挑戦するとき
孤独の中で始めることが多いと思います。
そんな孤独の中、力を込めて走り出す人の
様子を撮影したのが①です。
ヨコから撮影して躍動感を表現しました。
しかし、孤独な挑戦には挫折が伴うこともあります。
そんな様子を②で表現しました。
画角に対して小さくすることでこの人の孤独を
表しています…
ここで、Aさんに指導したこととして、
①テーマを自分なりに解釈して
表現するものを決めること。
②それを起承転結の枠に当てはめること
③解説文の書き出しは
写真⓪になるよう書くこと
④残りの解説文は写真の技法や
写真と写真のつながり、いわば
行間を文字で説明すること
などです。
他にも毎日様々なアドバイスを
行いましたが、1つずつ吸収してくれたので
日々成長を実感していました。
試験の前々日や前日には
練習通りやれば受かるなと
思えるレベルになっていました。
そのため、本番では楽しんでくることを
最後のアドバイスとして伝えました。
芸術分野の要素も含む選考ですから
創作や表現を楽しむことは何より大切だと思います。
AO入試に必要な要素
さて、いかがでしたでしょうか。
長くなりましたが、Aさんとの
数か月に及ぶ対策エピソードに
個人的な考えも交えながら解説しました。
ここで、中盤に書いた、
対策のポイントと必要な力を
振り返りたいと思います。
最後まで読んだあとでは、
どれも無関係に感じないのではないでしょうか。
最後に少し大きな話になりますが
立命館大学映像学部のAOに限らず、
他の総合選抜ひいては進学後も
重要なことだと思います。
自らの志
志とは、人生を通して実現する目標です。
「夢」との違いは、世界・社会へ
どのように還元するかにあります。
誰に、どんな方法で、何をして
どんなことを実現するのか。
なぜ受験で志が必要なのか。
それは、あなたの志の実現の
通過点が志望校であり、
実現に必要なことを学ぶ
場所だからです。
じっくり考えてみてください。
受験を通り越して、その先の人生にも
きっと大切な指針となるはずです。
論理構成・相手を意識・鑑賞
この力は一朝一夕で
身につくものではありません。
日々意識して、心がけることで
メキメキ伸びてきます。
残念ながら、現代の高校生の
日常生活において、これらを
実践する機会は乏しいと感じます。
気軽に始めるなら、
・新聞記事の要約
・読書後の要約&レビュー
・映画・ドラマの要約&レビュー
などでしょうか。
ゼロから自力で創作・表現する機会を
作れるならそれがベストですが、
自分で要約したものや
自分の感想を周りの人に見せて
評価してもらうなどの習慣でも
十分に成長できるはずです。
様々な作品を鑑賞する機会にもなりますね。
この学部を考えている人にとっては
特に重要だと言えます。
アウトプット・インプット
どちらも重要です。
豊かな感性を育みましょう。
自分の考えを持つ
社会問題、世界情勢など
日々のニュースに関心を持つところからです。
ニュースを見ても分かりにくい
と思う人は調べましょう。
そして、自分なりの考えを持ってください。
感想と考えは異なります。
正解かどうかは脇に置いて、
自分の意見と根拠を持つ習慣を
身に付けてください。
社会全体として、
答えのない問題に立ち向かう
時代がすぐそこまできています。
そんな時代を自分の足で立って
歩むために学んで下さい。
まとめ
最後までご覧いただきありがとうございました。
近年、総合型選抜や学校推薦型選抜で
大学に進学する生徒の数は全体の
約半分に到達しようとしています。
一般選抜の穴場や、楽な入試という
イメージを持たれているような声を
耳にすることがあります。
今回解説した立命館大学映像学部のように
ペーパー試験で測りづらい能力が、
試されるわけなので、決して楽ではありません。
一般選抜同様、早めの動き出しと地道な努力は
不可欠です。そして、対策しづらいものもあります。
当塾では一般選抜も総合型選抜も最後まで
1人ひとり丁寧に指導を行い合格のサポートを行います。
志望校に向けて頑張る受験生の
ご活躍を心より祈っています。